「返済が始まってから、毎月の資金繰りが本当に苦しい」——そんな声が、経営者の間で増えています。コロナ禍を乗り越えるために活用した「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」の返済が、いよいよ最後の山場を迎えています。
2026年4月から9月にかけては、据置期間が終了する企業が集中する「最終ピーク」の時期です。物価高、原材料費の上昇、そして賃上げ圧力——これらが重なった今、どう対処すればよいのか。本記事では、中小企業経営者が今すぐ打てる具体的な手を整理します。
ゼロゼロ融資の現状と「最終ピーク」とは何か
ゼロゼロ融資とは、2020〜2021年にかけてコロナ禍の事業者を支援するために実施された、実質無利子・無担保の融資制度です。国と自治体が利子補給や保証を行ったことで、中小企業・小規模事業者を中心に多くの事業者が活用しました。
この融資には、通常1〜3年の「据置期間」が設けられており、その間は元本の返済が不要でした。しかし、融資を受けた時期から3〜5年が経過した今、据置期間が順次終了し、本格的な元本返済が始まっています。
特に2026年4月〜9月は、民間金融機関によるゼロゼロ融資の据置期間終了が集中する「最終ピーク」とされています。この時期に多くの中小企業で一斉に返済額が増加するため、資金繰りへの影響が特に大きくなると見込まれています。
実際、2026年1月時点でゼロゼロ融資利用後の倒産件数は依然として報告されており、据置期間明けの本格化に向けて経営者の警戒感は高い状況が続いています。
なぜ今「特に危険」なのか——複合要因が重なる2026年夏
返済ピークだけであれば、多くの企業はなんとか対処できたかもしれません。しかし2026年の夏は、それ以外にも複数の逆風が重なっています。
① 賃上げによる人件費の増大
2024〜2025年にかけての賃上げの波は、2026年も続いています。最低賃金の引き上げや、採用競争激化による給与水準の底上げが進み、人件費の増加が経営を圧迫しています。特に製造業・飲食業・介護業では、この影響が顕著です。
② 物価高・原材料費の高止まり
円安の影響も残る中、原材料費や仕入れコストは高止まりが続いています。中小企業白書(2026年版)によると、コスト全般の価格転嫁率は53.5%にとどまっており、約半分のコスト増しか価格に転嫁できていない実態が明らかになっています。
③ 売上回復の遅れと利益薄
コロナ禍からの売上回復が十分でない業種・企業では、利益が薄いまま返済が始まるケースも少なくありません。「売上は戻ったが、利益が出ない」という状態では、借入金の返済に充てるキャッシュが確保しにくくなります。
今すぐ取るべき3つの選択肢
では、資金繰りへの不安を抱える経営者はどう動くべきか。大きく3つの選択肢があります。
選択肢①:返済条件の変更(リスケジューリング)を金融機関に相談する
まず最初に検討すべきは、融資を受けた金融機関への相談です。返済額の減額や返済期間の延長(リスケジューリング)は、金融機関との交渉によって可能な場合があります。
重要なのは「早めに、かつ正直に相談すること」です。資金が本当に底をついてから相談しても、金融機関が動ける余地は限られてしまいます。現時点でまだ余裕があるうちに、試算表や資金繰り表を持参して相談に行きましょう。
なお、リスケジューリングを行うと一定期間は新規融資が難しくなる場合もあります。メリット・デメリットを十分に理解した上で判断することが重要です。
選択肢②:経営改善サポート保証を活用して借り換えを検討する
中小企業庁は、ゼロゼロ融資の返済負担を軽減するための支援策を拡充しています。その一つが「経営改善サポート保証」の活用です。これは、経営改善に取り組む事業者が、複数の借入金を一本化(借り換え)して返済条件を整理するための保証制度です。
活用の流れは以下のとおりです。
- 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)に相談し、経営改善計画を策定する
- 金融機関を通じて経営改善サポート保証を申請する
- 審査が通れば、複数のゼロゼロ融資をまとめて借り換え、月々の返済額を抑える
認定支援機関は、税理士・中小企業診断士・商工会議所などが該当します。まだ相談していない方は、地元の商工会議所や担当税理士に声をかけることから始めましょう。
選択肢③:収益改善と並行して「稼ぐ力」を強化する
返済問題は「出ていくお金をどう減らすか」だけでなく、「入ってくるお金をどう増やすか」の視点も重要です。以下の取り組みを並行して進めることで、返済原資を生み出す力を高めていきましょう。
- 価格転嫁の推進:2026年1月に施行された「取引適正化法(取適法)」を追い風に、コスト増を適切に価格に反映させる交渉を進める
- 粗利率の改善:付加価値の高い商品・サービスへのシフトや、不採算顧客・商品の見直しを行う
- 業務効率化によるコスト削減:ITツールの活用や業務プロセスの見直しで、人件費以外のコストを圧縮する
借り換えや返済猶予はあくまで「時間を買う」手段です。その間に収益体質を改善しなければ、問題は先送りになるだけです。
「何もしない」が最大のリスク——経営者に求められる行動力
返済ピークを前にして、「まだ大丈夫だろう」と様子を見ている経営者も少なくないかもしれません。しかし、資金繰りの問題は放置すれば放置するほど選択肢が狭まります。
金融機関への相談も、支援制度の活用も、「余裕があるうちに動く人」が優先的に対応してもらえます。すでに資金がショートしかけてから動いても、できることは限られてしまいます。
今すぐ確認すべきことを整理すると、次のとおりです。
- ゼロゼロ融資の残高と返済スケジュールを再確認する
- 向こう6か月の資金繰り表を作成し、月ごとのキャッシュ残高を把握する
- 資金不足が見込まれる月があれば、早急に金融機関または認定支援機関に相談する
- 取引先への価格転嫁や業務効率化など、収益改善策を同時並行で実行する
経営者自身の「心理的負荷」にも向き合う
返済問題は数字の問題であると同時に、経営者の精神的な負担でもあります。「誰にも言えない」「相談したら信用を失う」という思い込みから、問題を一人で抱え込んでしまう経営者も多いです。
しかし実際には、金融機関の担当者は「早めに相談してくれた方がありがたい」と話すケースがほとんどです。問題を隠すよりも、正直に状況を開示して一緒に解決策を考える姿勢が、信頼関係を築き、支援を引き出すことにもつながります。
経営者が孤独に陥らないためにも、税理士・中小企業診断士・商工会議所の経営相談窓口などをうまく使いながら、「相談できる環境」を整えておくことが重要です。
ゼロゼロ融資の返済が困難な場合、まず何をすればいいですか?
まず金融機関に早めに相談することが最優先です。返済が始まる前・滞納する前に動くことで、返済猶予(リスケジュール)や条件変更に応じてもらえる可能性が高まります。「言い出せないまま放置」が最もリスクが高い行動です。
ゼロゼロ融資の返済を猶予(リスケ)してもらうことはできますか?
はい、可能です。金融機関はコロナ禍の借入については柔軟に対応する方針を持っているケースが多く、事業計画書を持参して誠実に交渉することで、返済期間の延長・元金据え置き・月々の返済額軽減などが認められる場合があります。中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)への相談も有効です。
2026年夏が「最終ピーク」と言われる理由は何ですか?
コロナ禍の2020〜2021年に集中して実行されたゼロゼロ融資の多くが、3〜5年の据え置き期間を経て2025〜2026年に元金返済が本格化しているためです。特に2026年夏は返済開始が重なる企業が多く、倒産件数の増加が懸念されています。
資金繰りが苦しい場合、新たな融資を受けることはできますか?
状況によりますが、日本政策金融公庫の「経営改善貸付」や信用保証協会の保証付き融資など、既存のゼロゼロ融資とは別枠で借入できる制度が存在します。ただし新規融資は審査が厳しくなっているため、まず既存融資のリスケを優先しつつ、並行して専門家(税理士・中小企業診断士)に相談することをおすすめします。
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まとめ:2026年夏を乗り越えるための行動チェックリスト
最後に、今すぐ取り組むべきアクションをチェックリスト形式でまとめます。
- ☑ ゼロゼロ融資の残高・返済額・返済終了月を確認した
- ☑ 向こう6か月の資金繰り表を作成した(または税理士に依頼した)
- ☑ 資金不足が見込まれる場合は、金融機関に相談予約を入れた
- ☑ 認定支援機関(税理士・商工会議所等)に経営状況を共有している
- ☑ 経営改善サポート保証や借り換え制度について情報収集した
- ☑ 価格転嫁や粗利率改善など、収益改善策を1つ以上実行中である
一つでもチェックがつかない項目があれば、今週中に動き出すことをお勧めします。返済ピークは誰にとっても同じタイミングで訪れます。だからこそ、早く動いた経営者が支援を受けやすくなるのです。
2026年の夏を乗り越えた先に、より強い経営体質が待っています。焦らず、しかし確実に、一手一手を打ち続けていきましょう。


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